『ブッダ』の名句



  【凡 例】
 1.引用した言葉は吹き出しや行間毎に一つのカギ括弧で括り発言順に並べました。
 2.同一発言者の台詞が続く場合、同一のコマの中にあれば改行せず続けて表記し、別のコマに変わるところは改行をしました。
 3.原典の台詞に句読点が無いため、読みやすさを考慮して適宜空きマスを入れました。
 4.斜体は吹き出しで囲わない独白や説明などの台詞です。
 5.巻数・頁は四六版ハードカバー本のものです。


● 第 8 巻 祇園精舎●

  ・第六部第9章 ナラダッタ

(※高熱に冒されているナラダッタに薬を与えようとしたブッダをナラダッタは制する)

ブッダ
 「え…なんですか…そこにいろと……」「どうしてあなたに薬をさしあげてはいけないのです?」「薬をのめないのですか?」

 「そうですか…薬ものまず手当もなさらない では あなたはそこで死を待つだけだとおっしゃるのか」

(※ナラダッタはクモの巣のクモを指さす)

ブッダ
 「えっ」

 「クモが網をはったままひからびて死んでいる…」「どういう意味ですか?」
 「何をいいたいのか…」
 「なるほど……あなたはこうおっしゃっているのだ……」「このクモは自然に生命がつきたのだ」「自分も薬や人手で無理に生きのびるのでなく 生きものらしく自然に死にたいと−」
 「このかたは死期をさとっておいでなのだ」
 「……私はおろかでした あなたの心が読めなかった」
 「よくわかりました」「もうじゃまはいたしません……」「でもここにいて静かにお守りしてよろしいか……」

 「この人はどういう素性で なぜこのような道へはいったのだろう……きっと よほどのわけがあったにちがいないが……」
 「それにしても何十年もけものと同じ生活をし孤独で……」「目もつぶれ 口もきけず たえてきたというのはなんという苦しみだったろう」
 「いや……もしかしたら最後には苦しみではなくて……」
 「大自然の中にとけこんだ清らかな毎日だったのかもしれない」
 「十年前 私はブラフマンに教えられて 人間は自然の流れに身をまかせて生き そして一生を終えるのがいちばん正しいのだとさとった……この人はまさしくそれを実行したのだ……」

(※ブッダはナラダッタの最後を看取る)

 「−ブッダは偉大な人の死を見て感動した その感動はピッパラの樹の下で悟りをひらいて以来 ひさしぶりの感動だった 人間が生きものらしく生き その生涯を自然にゆだねて終わることが いかに感動的なものかを知った」「ブッダはだまって物思いにふけりながら歩いた」
 「自分もやがて年老いて 病魔におかされて死ぬであろう そのときは自然にゆだねてあのように死にたいと思った………」
(62〜73頁)

  ・第10章 祇園精舎

(※マガダ国の寒林《墓地》にて)

スダッタ
 「でも……でもどうしてあなたともあろうおかたが」「かような死体のばらまかれた うす気味悪いところを散歩なされるのですか?」
ブッダ
 「死体がなぜうす気味悪いのかね?」

(※ブッダはハエの死骸を取り上げてスダッタに示す)

スダッタ
 「?」
 「これは……ハエの死んだのでございますな……」
ブッダ
 「どうだ 気味が悪いか」
スダッタ
 「いいえとんでもない なんともありません」
ブッダ
 「これも死体ではないか?」
スダッタ
 「ハエと人間はちがいます!」「人間の死体は……なんとなく恐ろしいので」
ブッダ
 「それは あなたの気のせいだろう?」
 「人間もハエも死ぬということは同じ…生きてるということも同じ」「この世の中に生きているものはみんなおんなじなのだ 生まれて……生きて……死ぬ」
 「死体がこわいのは ホントは死がこわいのでしょう 旅の人」
スダッタ
 「そ そのとおりで…」
ブッダ
 「だが生まれればいつかは死ぬものだ」
 「かならず死ぬのに それをこわがるのはむだではないか?」
スダッタ
 「ハア」
ブッダ
 「旅の人よ」「あなたは財産が心配だ 富が心配だ 何もかも心配だから死ぬのがこわいのでしょう」
スダッタ
 「……はい そのとおりで…」
ブッダ
 「その心配をやめればらくになる 死ぬ日までしあわせにくらせるだろう」(94〜96頁)


ジェータ
 「よう スダッタ長者!」
 「……じゃない いまは文なしスダッタか…どうだ?ひもじいか なさけないか」
スダッタ
 「いえ…王子…その あべこべで」
ジェータ
 「おい負けおしみいうなよ 降参するか そしたら金は返すぞ」
スダッタ
 「いいえ 金はあのままにしてください それどころか わしは一生かかってもあの園にしきつめますで」
 「どうかあと三十年お待ちくださいまして あの園を……」
 「それまでわしは このかりの宿でこじきをして金をためます」
ジェータ
 「いいかげんにしろ そんなことまでして一生なにがたのしいんだ おまえバカか」
スダッタ
 「いいえ たのしいったらこんなたのしい人生はございません」
 「財産を持っていたときは いつその財産がなくなるかとられるかという心配で」「一日とても心が安まりませんでした」
 「だけど いまはなんにもないのです それだけいっさいの苦しみがなくて 毎日 じつにたのしいのです」
ジェータ
 「えーい もう負けおしみは聞きあきたッ そんなにたのしいなら助けてやんないぞッ」
スダッタ
 「またどうぞおこしを…」
ジェータ
 「……よし ためしてやる」

(※ジェータは金貨を一枚地面に落とす。落ちている金貨に気づいたスダッタはそれを拾う)

ジェータ
 「フフ……思ったとおりひろいやがった」「口ではけなげなことをいってもやっぱりこじきだな あの金で何か買って食ってしまうだろう」
 「そらそら 大急ぎでかけだしたぞ」
 「おや 市場と逆のほうへいく…」
 「なんだ…どこへ持ってくんだ……」
 「あーっ 金貨のところにならべた!」
 「負けた!!」「おまえに負けた!!」「荘園はタダでゆずってやるぞーっ」(110〜113頁)


  ・第11章 陥穽

ルリ
 「おお……ブッダ!!」「こんなとこでまたお会いしようとは…」
ブッダ
 「……あなたの国へむかう途中なのです」「お約束どおりに…」
ルリ
 「おお…そうでした いや…これは失礼いたした お知らせくだされば お出むかえしましたのに」
ブッダ
 「ところで そのいくさのなりは どういうことかな」
ルリ
 「こ……これは…………」
ブッダ
 「またカピラヴァストウへいかれるのか?」
ルリ
 「………はい…」
ブッダ
 「……シャカ族を滅ばしにか」

 「本心ではありませんな?」
ルリ
 「………は……」「王の権威のためです……」
ブッダ
 「権威…あなたの意地なのか」
ルリ
 「いや!!ちがう…………」「王である私の父が 王の権威にかけて滅ぼせと申しました」
 「王は私にとってただひとりの親です」「その私の父がシャカ族をにくんでおり 滅ぼせと命じました 子は親の命令に従うべきではないでしょうか」
ブッダ
 「おなたは父王の命令ならなんでも信じて従いなさるのか」
ルリ
 「いや………………」
 「信じてはいない……しかし……………」「私が父を信じなければ」「いつかは同じように私のこどもも 私を信じなくなるだろう」「こどものためにも 私は…父に従うのです」
ブッダ
 「それはちがう!たとえ王だろうと バラモンだろうと 信じていないのなら従うことはない!」
ルリ
 「えっ」
ブッダ
 「あなたはあなたの本心をたよりにして ゾウのようにひとりで堂々と歩くがよい」
 「それがあなたの息子へのなによりの手本になる」
ルリ
 「よくわかりました」
 「私の本心のみたよりにする……ご忠告ありがとう!」「私は兵をひきあげます」(118〜121頁)


ブッダ
 「私が以前 ごはんをたべ残して それを捨てようと思ったとき 弟子がふたり托鉢から帰ってきたことがある」「ふたりとも托鉢が思うようにいかず おなかをすかせておった」
 「私のたべた残りものでよかったらおあがり」
 「ひとりは『ブッダがすすめてくれたのだ たべなければ捨てるんだ もったいない』とおもい」
弟子その一
 「いただきまーす」
ブッダ
 「もうひとりは」
弟子その二
 「せっかくですが 私はブッダから教えはいただきますが……」「たべものをめぐんでいただくつもりはありません」
ブッダ
 「と 飢え死にしそうなのをがまんして去っていった」
 「さて……そこでみんなにたずねるが」「おまえたちならどうしたと思う?どっちの弟子が正しいと思うかね?」
アナンダ
 「私なら……」「ブッダからいただいたものならよろこんでたべます もったいないです」
ブッダ
 「アナンダ おまえは まだ私の心がわからんのか…これだけいっしょに旅をしていて……」
 「私はおまえたちに人の生きる道を教えようとしているのだ 私はそのために一生 旅をしてまわっておる」「それなのに それ以外のものを私からうけてなんになるのだ?たべものなどをもらうために 私についてくるのか?」
アナンダ
 「はーッ!!」
ブッダ
 「学校を卒業すれば先生には会えなくなるが 先生の教えは残るだろう?」「私もいつか死ぬ しかし教えだけはみんなに残す あとは自分自身で生きることだ」「自分だけのちからでな!!」(122〜124頁)


  ・第七部第1章 悲報

ブッダ
 「−−この祇園精舎に修行をつづけるビクとビクニたちよ 私はいったん竹林精舎にもどらなければならない」「私はあなたがたに心をこめて人の生きる道を説いた いつもいうように これからはあなたたちひとりひとりの自分の問題なのだ」
 「シャカ族の人々は私の説く教えを聞いたにもかかわらず 自分でおろかな自殺行為に走って滅びてしまった」「人間という動物はどんなすばらしい知識や道徳を持っていても」
 「かならずだれかがそれを無視して おろかな行動へつっ走るものなのだ」「千年…二千年たってもこの点では 人間はちっとも進歩はしないであろう」
 「……どうか…私の教えを生涯忘れないように」「別れにあたって誓ってほしい!」(234・235頁)

  ・第2章 ダイバダッタ

(※ダイバダッタは爪に毒を塗りブッダを殺そうとするが、転んで爪を剥がし自ら毒に冒されてしまう)

ダイバダッタ
 「あ…あ も……もう……手が動かん………(※ブッダが現れる)………だれだ?そ…そこにいるのは」
 「ブッダ!!あんたがにくい あんたは……私の最大の敵だったんだ」
ブッダ
 「私はおまえの敵ではない」
ダイバダッタ
 「いや……あんたは敵だった」
 「私ァ……あんたになりたくてなれなかった……だ だから…あ…ん…た…が…に…にく…かった…」
ブッダ
 「おまえの敵はおまえ自身なのだ ダイバダッタよ……」

  ・第3章 アジャセ王の微笑

(※アジャセ王の頭の腫れを治すため、ブッダは毎日アジャセの頭に指を当て続けた)

ブッダ
 「陛下!もうすぐ腫れも消えます!!」「もうしばらくのご辛抱」
 「では明日…」
アジャセ
 「ブ…ウ…ブ……ブ……ブッダ……」
 ニコッ
(※アジャセの微笑みにブッダは驚きと喜びの表情をうかべる)
ブッダ
 「王がはじめて微笑まれた」
 「かいがあった……!!」
 「あの微笑みは…まるで……」
 「神のようだった」

 「神……神だって!?」
 「なんたることだ!!」「神……」
 「わかったぞ そうだ いまわかったぞ〜っ」
 「人間の心の中にこそ…神がいる…神が宿っているんだ!!」

それは大いなる悟りだった  ブッダは喜びのあまり 走りつづけ さけびつづけた
そして近くの山の頂きに登り 天にむかってなおもさけんだ

ブッダ
 「ブラフマン!!聞いてください」「私はアジャセ王の微笑みに 神のような美しさを見つけました!!」「修行僧でもない 聖者でもない ふつうの人間です」
 「ブラフマンよ!神というのは だれの心にも宿っているのですな?」「だれでも神になれるのですね?」「そうでしょう?」
 「私はいままで きびしい修行をして聖者になることを弟子たちに教えてきました!!」「そうじゃない!そうじゃないんだ!聖者どころか神には…だれでもなれるんだ!!」
 「私はこの新しい悟りを 明日から一千人の弟子たちに いや…世界じゅうの人たちに教えるぞ!」「この山の上で………死ぬ日まで説きますぞ ブラフマン!」

霊鷲山(りょうじゅせん)と呼ばれているラージギル城の東北のその山で ブッダは強く心に誓った(299〜304頁)


(※霊鷲山に集まった多くの老若男女の前で)

ブッダ
 「いつも私はいっているね この世のあらゆる生きものはみんな 深いきずなで結ばれているのだと……」
 「人間だけではなく 犬も馬も牛もトラも魚も鳥もそして虫も……それから草も木も……」「命のみなもとはつながっているのだ みんな兄弟で平等だ おぼえておきなさい」
 「そして……みんな苦しみやなやみをかかえて生きている」「…これを『衆生(しゅじょう)』と呼ぼう」

 「もし あなたがたの親や兄弟の中に 飢え苦しんでいたり」
 「不幸が起こったりしたらどうなる?あなたの家はつぶれ あなた自身にも不幸がくるでしょう」
 「自分の不幸を 自分の苦しみをなおすことだけ考えるのは心がせまいのだ 家のこと みんなのことを考えてみなさい」「だれでもいい 人間でもほかの生きものでもいい 相手を助けなさい 苦しんでいれば救ってやり こまっていれば力を貸してやりなさい」
 「なぜなら 人間もけものも虫も草木も 大自然という家の中の親兄弟だからです!」
 「ときには身を投げだしても相手を救ってやるがよい」
 「ひとつ……たとえ話をしよう」
 「ある老人が」

 「サバクにゆき倒れになっていた」

 「…その老人は飢え かわき そしてつかれで足も動かなかった…そこへ……」

(※クマ・キツネ・ウサギが集まり、老人を助けようと食料をとってくるが、ウサギは何も手に入らない。ウサギは老人にたき火を起こさせると、自身を食べ物として老人に与えるため火の中に身を投げる。)

ブッダ
 「ウサギは自分から飢えた人にたべられて そして神になった…… さていまのはたとえ話だ むかし……私がこどもの頃聞いた話なのです」「だが 私はこのような行いをした人間をまのあたりに見たことがある…その人は生きたまま飢えたオオカミの子に自分をたべさせたのだ」
サーリプッタ
 「………」
ミゲーラ
 「………」

ブッダ
 「その人はもちろん苦しかったろう ひきさかれるいたみは たえられなかったろう」 「もちろんこのようなことは だれにもできることではない……」

(※アジャセ王が到着しブッダの説法に聞き入る)

ブッダ
 「みなさんはみなさんのできる方法でやればよい」

 「お金を持っている人は苦しんでいる人にあたえ ちからのある人は苦しんでいる人をささえてやりなさい」「よぶんなお金もちからもない人は……せめて相手の気持ちをくみとって かわいそうに…と同情してあげなさい」
 「それだけでもいいのです それであなたはあのたとえ話のウサギのように」

 「相手のために苦しんだことになる」
 「この心のことを『慈悲』と呼びましょう」
 「慈悲!」「どんな人の心にも宿っているはずです」
 「だからあなたが だれか苦しんでいる人のことをあわれんだとき」「同じように別の人が きっとあなたについてあわれんでくれているはずです」

(※回想場面)
瀕死のビンビサーラ王が夫人に向かって
 「…あ…あの子をうらむな ……あの…あの子は… かわいそうな…子だ……」

アジャセ
 「……父上……」
ブッダ
 「あなたがだれかを助けたら 別の人が今度はあなたをきっと助けてくれましょう」
泣き崩れるアジャセ
 「ウ…ウッウッ…ウッ…ウ…ウ…ウッ」
ブッダ
 「……それはだれもかれも 生きとし生けるものがつながっているからだ……」
ハラゲーイ
 「アノ……陛下……………」
アジャセ
 「ほっといてくれッ!!」

 「すぐ城へ帰って 父上ビンビサーラ前王の盛大な国葬の準備をせい!!」
ハラゲーイ
 「ウハーッ」
アジャセ
 「ブッダよ 予は生あるかぎりあなたの弟子だ…………」(309〜322頁)

  ・第4章 旅の終わり

ブッダ
 「一方では老いさらばえて死に 一方ではあいついで生まれていく 個々は入れかわっても鳥そのものは」「永久に存在する……滅びぬためには 死も必要なのかも知れぬ」
 「アナンダ…わしの命もあと三か月じゃ」
アナンダ
 「えっ!?」
 「さ 三か月!?そんなにおしせまっているのですか?」
ブッダ
 「……モッガラーナが予言したわしの死だ たぶんまちがいあるまい」
アナンダ
 「そんな…そ…そんな……」
ブッダ
 「なげくことはない 人間だれも死ぬ わしも同じだ あたりまえのことだよ……」
アナンダ
 「ブッダ…人は死んでどうなるのでしょう?」
ブッダ
 「おまえはまだそんなことを気にするのかね 何十年もわしについていて」
 (※サナギを指して)「これを見なさい」
 「これはつい二・三日前までは青虫じゃった」
アナンダ
 「………………」
ブッダ
 「あと何日かたつと この殻の中から蝶が生まれてとんでいくだろう」
 「生命(いのち)というのも そんなものじゃ」
 「長い長いながーい時間の中で」「人間でいられる時間は ほんのこれだけなのじゃ」
 「死ぬということは 人の肉体という殻から 生命(いのち)が ただ とびだしていいうだけだと思うがよい」
アナンダ
 「そ それじゃ とびだした生命(いのち)はどうなるんです!?」
ブッダ
 「−−殻に閉じこもっているときの虫は 殻から出たらどんなくらしをするかは 知るはずがなかろう?」「同じように 人間も肉体という殻からはなれてとび立てばどうなるか 生きているあいだはだれにもわからぬ」
 「ただ それからさらに 無限に新しい世界がつづくはずじゃ」
アナンダ
 (※自分の体を指して)「へー 殻なのですか これが…」
シャカ
 「そうだ…だから死はなにも怖(おそ)れることはない ほんの一瞬 とおりぬけるだけじゃ」
アナンダ
 「でもブッダ!!ブッダはこの世でたったおひとりです ブッダが死ねば だれももうブッダの教えを聞けません!」
ブッダ
 「…犬もネコも 親はわが子に自分の体験を教えて死ぬだろう?」
 「わしもおまえたちに ずっと教えてきたはずだ」
 「そしておまえも たぶん若い弟子に教えるだろう」「それで わしの教えも永遠に伝わるのだ」
 「さあいこう もう時間がすくないぞ」(338〜341頁)


スバッダ
 「スバッダと申しまする」
ブッダ
 「何かわしに?」
スバッダ
 「はい わしゃー九十まで生きたのに まだ迷うております」
 「ブッダ わしのためにお教えくだされ 何かひとことでも…」
アナンダ
 「これッ……ひと目会うだけでよいということだったのに」「難題をブッダにもちかけなさるなっ ブッダはご危篤なのだっ」
ブッダ
 「アナンダ……」「………からだをささえてくれ …ひ…ひとこと……お教え…しよう…」
アナンダ
 「しかしブッダ!!」
ブッダ
 「…スバッダどの…この…世には三つ……」
 「あなたがたが心から…信じて 疑っては…ならぬものがある……」
スバッダ
 「はい」
ブッダ
 「仏」「法」「僧」「この三つじゃ…」
スバッダ
 「ブッ…ポウ…ソ…?」
ブッダ
 「"仏"…は…天の教え "法"は…し…真理の…教え そして…"僧"は…正しい人々の集いのこと…」「この三つに従い……」
 「信じ……犯すことが…なければ」「い…いつかさとりを持てる…」
スバッダ
 「あ…り…がとうございます!!」(352〜354頁)


ブッダ
 「もう…最後のときがきたらしい………」「お…おまえたち……な…何か…聞きたいことはないか…わしに」
ナディー・カッサパ
 「ブッダ…死なんでください!!」
ブッダ
 「生あるものはかならず死ぬ…これは運命(さだめ)なのだ…」
 「みんな……おこたることなく…精進せよ…」「わしはいま……涅槃にはいる…………」(355・356頁)


(2569.05.22)



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